良くない節電方法の報道が多い

平成23年6月30日
中西和彦
この夏の大停電を避けるために、節電のためのエアコンの使い方や自宅での暮らし方を、
専門家と称する人たちを使ってニュース番組などでしきりに報道しております。

その中で、どんな家ならば…と言う設定条件無しで、あたかもどの家にでも共通するような
錯覚を起こさせる、間違った節電方法の報道が非常に多いので心配しております。

例えば、今朝の報道では、『子供が帰宅したら、リビングに集まって、ドアや窓を閉め、換気をせずに、
リビングのエアコンのみ使用して節電している。』と言うご家庭の紹介がありました。
この報道の通りにするならば、リビング以外の窓は開けて自然に任せ、リビングのみ閉鎖してエアコン
をつけている状況です。
さて、これの問題点は、
 @居間の空気が換気不足となり健康に悪い、特に子供は大量の良い空気を必要とする。
 A住宅内の温度差が激しくなり、健康に悪い。
   エアコンの効いているリビングと窓から暑い湿気を持った空気が入っているトイレの温度差を
   イメージしてください。また、便器の配管や陶器部分で結露するはずです。
 B温度差、湿度差により、住宅内でカビやダニを大量に発生させて気管支系の病になり易い。
   洗面所や子供部屋の家具の裏やベッドの裏側やベッドパッドや布団が十分に高温多湿な空気に
   さらされており、たっぷりと湿気を吸い込んでいる状態です。これにより発生したカビの胞子やダニ
   やダニの死骸がハウスダストと呼ばれるものです。日本は亜熱帯に近い気候なのを忘れずに…
 C冷房負荷が大きく、省エネにならない。
   この状態は、冷房ではなく採冷とでも呼ぶ状況です。リビングのエアコンの負荷が大きくて
   一生懸命に加速する車の様な状態ですので、燃費は最悪になります。

では、このケースではどう暮したら良いのか?
本当は、家全体の窓を閉め切って、カーテンなどの日除けをし、各部屋のドアは開け放ち、必要量の
換気設備を適切に動かし、リビングのエアコンのみ使用している。
と言う状態を、朝からずっと続けている方が冷房負荷は少ない上、エアコンのおかげで湿度が50%代
に近づけられるので、家中のカビやダニの活動を抑制できる。
さらに、熱中症も予防できるし、少し汗ばみますが冷え過ぎも防げます。
室温28℃か29℃湿度58%程度なら良いのでは…湿度さえ下げれば温度なんて30℃でも快適です。
普通の二階建ての家なら、一階のリビングと二階の一部屋のエアコンを上記の様な状態で使用します
と快適で、省エネで、健康的で、きれいな生活ができます。本日お邪魔しましたお客様の家では、30℃
のエアコンの設定で十分に快適だそうです。しかも、奥様は妊娠中なのに。  湿度ですね…

15年ほど前から、その程度に差があるにしても、弊社のみならず高気密高断熱な住宅が増えています。
さらに、2×4の住宅などはメーカーが意識しなくても、昭和55年頃から一定以上の断熱性能や気密性
能が存在しておりまして、戦前や戦後の一般木造とは、比較になりません。
また、マンションの場合では、下層階と上層階では違いますし、立地環境でも違います。

先進国では一番高いと思われる電気代を払っている(米国の3倍)上に、健康を害するような節電を不
条理に強いられることは無いと思います。
エアコンは上手に使って省エネで快適なお住まいの環境を整えましょう。

ちなみに、ドイツの環境の専門家と2005年に話した折に指摘されましたが、日本の自動販売機一台の
電気使用量は、ドイツの一般家庭一世帯分の使用量だそうです。
コンビニやスーパーが多くある地域では、確かに自動販売機は要らないのかもしれませんね。
ドイツでは、学校の教室の温度がある一定を上回りますと休校にするそうです。
また、その専門家との会議をした役所のエアコンの設定は29℃でした。もともと比較的湿度の少ないド
イツですが、彼は少し汗ばみながら一生懸命に説明してくれました。

諸事雑記帳でも結露の話を記載しましたが、節電しすぎて結露をさせれば家の補修費も多くかかりま
すし、医療費も多くかかります。
私達も、少し汗ばみながら、健康で快適な生活をしたいものです。


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