自然の力を味方に付ける、断熱と遮熱のお話 P1 2010年8月 中西

断熱のお話は、色々な工務店さんやハウスメーカーさんのHPで紹介
されていますよね。各社とも自分の会社の工法が一番良いと喧伝して、
C値がいくつだとか、Q値がいくつだとかを盛んに訴えております。
確かに、それぞれのご意見には一面の真理があります。
 しかし、ドイツやスウェーデンの様な断熱先進国では、自分の会社の
宣伝ばかりをうるさく言いません。
私が、先述の(財)建築環境省エネルギー機構の断熱講習会の講師を
しました折に、自社のノウハウも含めて専門家の方々にお話したのは、
もっと公平で正確な技術をどのお客様にでも理解いただけるようにデータ
を含めてご提示することが大切だ…と言うことです。
その中の主な三点は、
@『断熱材は熱を断たない…熱の伝わりを遅くするだけ、』と言うことや
A『断熱材は、何か1つの製品が完璧なのではなく、使用目的と使用箇所
  により、長短を判断して組み合わせる事が大切です…』と言うことと
B『自然の力を味方に付けて、できるだけ機械や装置に頼らない工法…』
  と言った事です。

お聞きになられた技術者の方々の中には、私の話を、早速その方の会社の
ホームページで断熱材の解説に記載されておられますので、お話した甲斐が
有ったと喜んでおります。
 この写真はドイツのハイテクセンターと言う、専門家を教育する研修センターに置いてある、断熱材の熱の伝え方を理解する
ための実験装置です。左側の断熱材がロックウールで、真ん中が発泡スチロール=EPSで、右側が板状セルロースです。
上から熱を与え、下の引き出しの中にセンサーが有って、上にデジタル表示で引き出しの中の温度が表示されています。
左から74.9℃ 44.4℃ 36.6℃ というデータです。 同じ厚さでも熱の伝わり方が断熱材の種類で異なりますね。
この結果だけを見ますと、右側の板状セルロースは熱容量が大きいので一番良い値が出ていますよね…。
 ならば、断熱材は板状セルロースが全てにおいて良いのか? と申しますとそうではありません。
外張り断熱に使うには、板状セルロースは、施工上の都合で技術的には難しい素材ですし、充填断熱に使うときにも、
隙間ができ易くて使いにくいです。 じゃー駄目じゃん…と言われそうですが、さにあらず。
 二種類の断熱材を使う場合、例えば、外張り断熱にEPSを使って断熱と外気密を確保し、充填断熱に板状セルロースを
付加断熱として使用するケースなどでは非常に有効な素材となります。
要は、人間と同じで、適材適所で使って貰うことが大切なことだと良く解ります。
カナダのアイシネンなども、弊社ではリフォームに活用して非常に良い結果が出ております。アイシネンの特徴として、
狭い箇所や湿気が来ることが確実な床下などに吹きますと、吸湿性が無く断熱性が高く、隙間ができにくく目視点検が
やり易い、等というたくさんのメリットがあります。しかし、アイシネンだけが完璧な素材かと言うと?です。
充填断熱では、柱の熱橋は避けられませんので、冬ですと、スキー場で手袋なしで滑っているようなものです。
私は、外張り断熱を基本として、アイシネンや羊毛の充填断熱を露点の位置が変化することに注意し、熱抵抗値の差に
配慮しながら活用することが理想の形だと思います。 さらに、コスト面にも配慮してバランスの良い断熱選択が必要です。

左の写真は、スウェーデンで、一般のユーザーが買い物
帰りにでも立ち寄れて、断熱や気密やガラスの性能などを
勉強したり資料を手に入れたりできる、まるでデパートの様な
施設での写真です。
どこのメーカーのどんな品物とか言うのでなくて、本当に
伝えたい技術を正確に伝えているのが印象的です。
省エネと健康のための快適さを、『技術と性能』という公平な
判断基準で解り易く見せていることに感心しました。

次ページでは、自然の力を利用した遮熱と断熱の説明を
写真で見ていただきます。