長期優良住宅と断熱施工講習会の意味
2010年3月 記
財団法人 建築環境・省エネルギー機構(通称アイベック)が実施しております平成21年度の断熱施工講習会が
設計事務所や工務店向けに全国47都道府県の各会場で1月から3月にかけて行われております。

全国から高気密高断熱に詳しく、且つ実際に基準以上の住宅を建設している技術者の方々を講師として選抜し、
結果として13名が決定し、私もその一人に選抜されまして、静岡県と京都府と宮崎県を担当しております。
北総研の鈴木先生を入れて全員で14名のメンバーなので鈴木先生いわく、エグザイルならぬエコザイル…
なんだそうです。 エグザイルにとても失礼なおじさん連中のグループですが…
この講習会では、専門家の方たちに、性能表示制度でいう省エネ等級4=平成11年基準(通称 次世代省エネ)
をクリアーする断熱材の正しい施工方法を教室での講習と実物構造モデルを使って説明し、間違った施工方法
や防湿層のミス等により結露を起こすことの無いように注意を促すことが目的です。

この平成11年基準は、住宅版エコポイントや長期優良住宅の温熱計算の基準になっておりまして、CO2削減と
住宅の快適さのひとつの大きな指標です。
弊社では従来からこの基準以上の住宅しか造っておりませんので、社内では簡単に考えておりますが、講習会
にこられるたくさんの会社の技術担当者や経営者の方々は4時間半にも及ぶ講義と説明にもかかわらず、非常に
真剣に勉強され、且つ、たくさんの質問をなさいます。
あるデータでは、この基準以上の住宅の割合は、新築住宅全体の3割以下だそうです。また、その中で正しく
施工されている割合はその半分程度だと言う事です。
では、何故そんなに低い割合なのでしょうか? それは、断熱と言う考え方が気密と言う施工方法と連動すること
の意味を十分に理解していないことと、施工方法が非常に面倒なことです。

京都での講習の様子       . 静岡での実物モデル講習の様子

面倒と言うか大変と言うかは、断熱も含めて良い家を造りたいと思う気持ちの差なのだと思いますが、実際に
大変なことは事実です。例えてみましょうか、あなたが直線を引きたいと思えば定規を使うと簡単に直線が引け
ますね。でも、定規なしで、フリーハンドで1メートルの長さの直線を引くのは大変ですし、正確には直線になり
ませんよね。
この例えが、断熱基準であり設計者の指示なのです。私も設計の人間ですから図面に断熱材を描き入れるのは
簡単にできます。ですが、現場で実際に図面とおりにすべての部位に完璧な施工をするのはフリーハンドで
1メートルの直線を描くように難しいいのです。
私が、十数年前から自社の大工職と苦労し続けたのも施工の完璧さを求めたらどんな断熱方法が良いか…
と言う問題でした。今回は、そんな努力の結果を三つの県の会場で建築のプロの方々にお話しております。
その内容と長期優良住宅の意義と言いますか意味と言ったものを、次頁からもう少しご説明していきます。

下のグラフは沼津市東原のSさんの家のデータです。クリスマスイブとクリスマス当日の冷え込んだ日の記録で
室内は 無暖房=エアコンを使用していない データです。  20006年12月24日12時から25日12時まで


細かい数値は技術的な検証に使いますが、ご覧いただきたいのは直感的に理解できるデータです。
まず、下のほうにお皿のようにカーブしている赤い線が、外気の温度で、夜中の2時にマイナス4.5℃を記録して
います。 上のほうで水平に近く動いている三本の線は、1階や2階の室温と基礎断熱の床下温度です。

どうですか…直感的に室内の温度が下がらないことの気付かれますよね。
このように、家自身がエアコンや他の暖房器具という設備機器に頼ることなく、ある一定の性能を保持している
ことが非常に重要なことです。 なぜなら、設備機器は耐用年数=約10年 が来ると定期的に修理や取替えの
費用がかかりますが、家自身は、一度きちんと造っておくとあなたの一生だけでなく、何かの理由で解体するまで
その性能を保持し続けます。
こんな省エネで高耐久な設計や施工が、これからの時代には本当に必要なのではないでしょうか?

上記は、断熱による温熱環境の話だけですが、長期優良住宅になりますと他にも大切な要素が入ります。
主に、『劣化対策』『耐震性能』『維持管理の容易性』の三項目が重要な要素です。
今でも、分譲地等で色々な会社が一斉に建築しているのを見ますと、外壁が昔ながらのラスモルタル下地の塗
り壁だったり、ALC版を通気層なしで直張りしている現場等を散見します。

また、充填断熱工法の家なのに、室内側に防湿シートを施工せずに、もしくは、防湿フィルム付の断熱材を
間違った施工方法で建築しているものも多数見受けられます。
さらに、火災保険が半分近くにまで割引されるほど火災に強いことが解っているのに、省令準耐火構造にして
いない在来木造工法ばかりしか見ることがありません。
車の性能が、あなたとあなたのご家族の命と安全を守るように、住宅の性能も、あなたのご家族を火事や地震から
守り、且つ、省エネで地球を守ります。もちろん、お財布にも優しい家になりますので経済的です。

是非、長期優良住宅にしてください、是非、省令準耐火構造にしてください。せめて、住宅版エコポイントは
もらってください。 あなたにとって良いことは地球にとっても大切なことですから。

こんなことを断熱施工講習会で専門化向けに専門的に話しております。
良い家に住みましょう…中西和彦

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