2023年2月16日  谷口 怜

親から子へ、そして孫へ世代を越えてくらす二世帯住宅。その一番の特徴は子育てや介護など人手があると助かる生活シーンで、支え合える住まい方であるところです。2家族が一緒に暮らす二世帯住宅には、生活リズムやスタイルによって、それぞれに合った間取りで計画することがとても大切。そこで今回は「3つの二世帯住宅の間取りのカタチ」と、「間取り検討の前に考えておきたいポイント」「二世帯住宅の施工事例」をご紹介します。

ー二世帯住宅の間取りタイプー

■1、同居型(融合)タイプ

1つ目タイプは同居型タイプです。キッチンやお風呂、トイレ等を共有して。個室をご家族分用意するタイプで、古き良き日本の住まいのカタチ。建物としての建築費は最も抑えらえる間取りでもありますが、二世帯の(例えば親世帯と子世帯)生活距離が近くなり、生活リズムが違う場合ストレスが多くかかる可能性があります。

■2、半独立型 タイプ

2つ目のタイプは半独立型タイプ。玄関やリビング等の一部の空間を共有し、ほどよくコミュニケーションの取りやすいカタチ。共有する部分を生活に合せて玄関とリビングだけなどと限定し、個室やダイニングスペース等を離した間取りとすることで、生活リズムの違いによる生活音を緩和しつつコミュニケーションが取りやすいカタチです。玄関を共有して、1階と2階のフロア毎に世帯を分けるカタチが多くあります。

■3、完全分離型 タイプ

3つ目の完全分離型タイプは、住まいの機能と空間を全て別々に計画し、将来にわたって選択肢が広がるカタチ。間取りだけではなく、水道、電気、空調などの設備配線・配管も別けておくことで使用していない時は、全ての設備の電源を切ることもでき、将来的に一方を賃貸として貸し出すこともできます。ご家族構成の変化に合わせて将来にわたって選択肢が広がる間取りのカタチです。

一方で全ての設備や機能を2つずつ設置する必要があるので、確保しなければならない土地も広く必要になり、建築にかかる費用も高めになります。

ー間取り検討の前に考えておきたいポイントー

ご紹介したとおり二世帯住宅には、大きく分けても3つの間取りのカタチがあります。どのような暮らし方を望むかで間取りが大きく変わることが想像できるかと思います。二世帯住宅の間取りは慎重に検討する必要があります。そして間取りの検討前にどのようなタイプを望むのかをはっきりさせて、プランナーに間取りの案を依頼するのが理想の間取りへのポイントになります。

  1. 間取りのタイプを決めてあるか
  2. 二世帯住宅に向いている土地か
  3. 経済的な分担を決めておく

1.間取りのタイプを決めてあるか

前述したとおり、二世帯住宅の特徴は子育てや介護など人手があると助かる生活シーンで、支え合える住まい方であるところにありますが、間取りのタイプによって必要な要素が大きく異なります。

タイプによって必要な面積や設備機器の数が変わるので、費用にも大きく影響します。次の項目の土地選びも必要な面積によって大きく変わってきますので、ご家族でよく話し合って間取りのタイプとご家族構成から必要な面積をざっくりと目安を付けておかないと、予算と大きく異なる計画になってしまいがちです。イメージの湧かない方はプランナーと相談しながら自分たちがどのタイプに当てはまるかを考えてみましょう。

2.二世帯住宅に向ている土地か

二世帯住宅に向いている土地選びのポイントは必要な広さが十分確保できるかです。

二世帯住宅で暮らすには、必要な広さをイメージする必要があります。建てるための面積はもちろん、世帯構成では大人が多くなります。また将来的に介護時のサポート車も考慮すると、必要な駐車場スペースが多くなる傾向があります。

また、アプローチを2方向に設けたい場合も十分な接道距離(道路と接する土地の長さ)が必要になります。3階建てして土地の面積を抑える方法もあります。面積が大きく必要な二世帯住宅は土地の広さでプランの自由度が大きく左右されるので慎重に検討しましょう。

3.経済的な分担を決めておく

二世帯住宅では1系統の場合、光熱費を別々に把握するのが難しくなります。水道、ガス、電気料金を明確に分ける場合は、水道配管、電気配線、メーターなども分けて設置する工事が必要になるため、かかる費用も大きく変わってきます。完全分離型で将来、賃貸をすることも選択肢に入れたい場合は必ず分けておく必要があります。

後から分けるのは、費用がさらに高額になり、電気配線はきちんと分けるのは難しくなってしまいますので間取り検討前に光熱費の分担の仕方について考慮しておく必要があります。

ー二世帯住宅の施工事例ー

三島市U様邸 50.8坪
家族5人で暮らす「同居型(融合)タイプ」

ご実家の建て替えで「同居型(融合)タイプ」の二世帯住宅にしたU様邸。仲の良いU様は建替えによる敷地の大きさも考慮して、親世帯と子世帯(夫婦2+子1人)の5人で暮らす同居型の二世帯住宅としました。

傾斜地に建つこのお宅は、床下を二世帯住宅に不足しがちな収納として活用しています。間取りは繋がっていますが、主に1階をご両親世帯、2階と小屋裏を子世帯の生活スペースとなっています。

玄関ホール
薪ストーブ

共用の玄関から入ると、親世帯用のリビング兼来客スペースと、家の中心にリビング階段と一緒に家中を暖める薪ストーブを設置。管理は実益を兼ねた趣味であるお父さんが担当。子世帯も必ずここを通って2階へと上がっていきます。

共用リビングダイニング
共用キッチン

階段を上がると傾斜地を利用した眺望のいいリビングダイニングと共用のキッチンがあり、仲の良いU様ご家族はみんなで一緒に食事をします。

親世帯の洗面脱衣室とシステムバス

同居型ではありますが、世帯人員数や生活リズムを考慮して洗面所とシステムバスは1階と2階それぞれ用意、みんなが使いたい時に使えるような間取りになりました。

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沼津市N様邸 坪
必要に応じて共用範囲を可変する、半独立型

必要な時に必要な助けをし合える半独立型を選んだN様邸

玄関は2ヶ所用意していますが、中の廊下で繋がりそれぞれに玄関収納を設けています。また変形敷地をりようした通路は、将来介護をする際に雨に濡れずに車の乗り降りができるように天井高を高めに取った通り抜けのポーチもポイントです。

ホームエレベーター
広めの洗面脱衣室
明るい寝室

玄関から3階まで直通のエレベーターを設置して、昼間をお家にいる時間の長い親世帯が日当たりが良い明るい3階を使用する計画になっています。将来的な介護も想定して洗面脱衣室を広めに取り、ホテルの様にトイレを洗面内に設置。同時に使用できるように別の場所にもう一つトイレを個別に設置しています。

リビングダイニングテーブルをレイアウト

ゆったりと座れるリビングダイニングテーブルをレイアウトした動線の短い間取りげとても便利です

古材を利用した大空間

2階の子世帯は間取りの可変性を重視してなるべく広い空間を確保、普段は3階で一緒に家事をしつつ、親世帯と生活時間が異なってしまう日には利用できるようにミニキッチンとシャワー室を設置しています。

まとめ

今回は、「二世帯住宅の家づくり」その特徴や間取りについてご紹介しました。

子育てや介護など人手があると助かる生活シーンで、支え合える住まい方で、様々なコストメリットがある一方で、十分な広さの土地の必要性や、建築費の高さ、プライバシーの確保や、事前に決めておくべき点と間取りの工夫や決めることは多岐にわたってクリアしていく必要があります。

家族やいろんな人の意見を参考に将来にわたって長く暮らしやすい家をイメージして、他の方の二世帯住宅を参考にしたり、プランナーに相談しながら家づくりを進めましょう。

2023年2月16日  谷口 怜