工法・テクノロジー


私達は数年前より、北海道などで普及している基礎断熱工法を標準採用しました。防蟻加工されたEPS(発砲ポリスチレン)を使いベタ基礎を外側で断熱しまして、温熱環境的には床下を屋内空間として作り、一階リビングの空気を床下に循環させて、半年ずれて太陽の恵みを供給してくれる地熱を利用し、夏は涼しく・冬暖かい一階の床を作り上げたのです。
この基礎断熱空気循環工法は、御殿場や芝川町のお客様の家においても、真冬に訪れたご友人達が、家中床暖房をしているの?とお尋ねになるほどの効果を発揮しています。

重量鉄骨造&鉄筋コンクリート造系

中西工務店が「基礎外断熱+地中熱活用工法」をすすめる理由

■「地中熱」を利用し、省エネルギー=省マネーな家づくりを目指す。
■ 100年住宅に対応した、基礎コンクリートの耐久性の向上を目指す。

2つの目的のため、1999年から「基礎外断熱+地中熱活用工法」を標準採用しています。2023年1月現在で150件以上のお宅で、「基礎外断熱+地中熱活用工法」の省エネで快適な暮らしをされています。

もくじ
◆「床断熱」「基礎断熱」の違いってなに?
◆基礎断熱のなかでも「基礎内断熱」と「基礎外断熱」の違いって?
◆地中熱の活用って何しているの?
◆中西工務店の取り組みと国の取り組み
◆コンクリートが長持ちするってどういうこと?

◆「床断熱」「基礎断熱」の違いってなに?
近年の地球温暖化対策や健康に対する関心から、気密や断熱に興味をもつ方がとても増えています。みなさんも、家づくりをはじめると一度は「充填断熱」「外断熱」「床断熱」「基礎断熱」というワードを耳にすることはありませんか?

建築の歴史の中で「断熱」という概念ができたのは、ほんの最近です。
昔の家では火鉢・囲炉裏・ストーブなどで暖を取っていましたが、これはあくまで熱を発生するものの回りだけを暖める「採暖」という発想です。部屋全体、家全体を暖めるという考え方自体が、人の健康や省エネルギーが問題視され始めたほんの数10年前に始まった考え方です。効率的に家中を暖めたり、涼しくするために家全体の「断熱」が必要になってきました。

断熱する部位の中でも、日常直接触れるところでもある床部分を断熱する「床断熱」と「基礎断熱」は全く違う考え方の工法になります。

【床断熱に付いて】
現在もっとも普及されている方法が「床断熱」です。

昔の家では、床下や土間に外部の空気を入れたり遮断したりして、家全体の暖かさや涼しさを最大限に取り入れていました。ですので住宅が断熱化する過程では床下で断熱する方法が自然に考えられるようになりました。床面を直接断熱する「床断熱」は今でも主流となっています。

〈床断熱のメリット〉
・長く普及してきた方法なので、技術が確立している。
・しろありの発生や湿気による腐食がわかりやすい。
〈床断熱のデメリット〉
・床の構造部材が熱橋になるため、断熱性能に上限がある。
・構造材をかわして断熱をおこなうため、複雑な施工となり、気密性能の向上に高い技術が必要になる。

【基礎断熱について】
床断熱の欠点である、高い断熱性能・気密性能を確保しようと考えられたのが基礎断熱です。高い断熱性能・気密性能を必要とされる北海道などの寒冷地での採用が始まりです。基礎断熱の中には「基礎内断熱」と「基礎外断熱」がありますが、どちらも床下空間が温熱環境的に「室内扱い」になるのが、床断熱と全く異なる特徴です。

〈基礎断熱共通のメリット〉
・床全体を断熱する床断熱に対し、基礎断熱は基礎立上りでの断熱のため、断熱材が半分以下の面積ですむ。
・地中熱の効果で1年間を通してほぼ15℃を保つ床下の温度を、「冬の寒さ対策」「夏の暑さへの対策」に効果をもたらす。
・熱容量の大きな基礎のコンクリートを蓄熱体として有効利用できる。
〈基礎断熱共通のデメリット〉
・床下の空気が室内へ循環するため、湿度対策や防蟻対策が必要。

◆基礎断熱のなかでも「基礎外断熱」と「基礎内断熱」の違いって?

【基礎外断熱について】
「基礎外断熱」は、基礎コンクリートの外側を断熱材でくるっと包み込んだ工法です。基礎のコンクリートを打設する前の型枠に断熱材を設置し、基礎のコンクリートと一体化させるため、慣れれば施工が容易な工法です。

〈基礎外断熱のメリット〉
・床断熱と違い、断熱材の厚みを増やすことができる。
・床断熱に比べ、気密施工が容易である。
・基礎のコンクリートを露出させないため、コンクリートが長持ちする。
〈基礎外断熱のデメリット〉
・断熱材と基礎の隙間に入ったしろありを発見しにくい。(その為現在はコンクリート打設後に断熱材を貼る「後貼り施工」は禁止されています)

【基礎内断熱について】
基礎外断熱で心配されたしろあり被害を防ぎながら、基礎断熱の良さを生かしたのが基礎内断熱です。「基礎内断熱」は、基礎のコンクリートの内側(床下側)に貼る方法です

〈基礎内断熱のメリット〉
・断熱材の厚みを自由に厚くできる。
〈基礎内断熱のデメリット〉
・基礎の内側では完全に断熱できず熱橋が発生しやすい。
・複雑な断熱施工になりやすい。
・床断熱同様、酸性雨や紫外線等から起こるコンクリートの劣化は防ぎにくい。

「床断熱」「基礎外断熱」「基礎内断熱」のメリット、デメリットはご理解頂けましたでしょうか?

◆地中熱の活用って何しているの?
それでは、基礎断熱共通の「地中熱の活用」について説明いたします。

上の図はある古民家の平面図です。の玄関部分から上につながる台所までの斜線部分が土間床になります。

玄関から入った土間の部屋は、台所=かまどや井戸の在る部屋だったり、座敷に通じる土足のまま移動できる廊下だったり、家庭内作業用のスペースだったりします。そして、その土間の部屋は、冬でも外より暖かく、夏は心地良い冷たさでした。これが、簡単に体感できる 地中熱(太陽熱による蓄熱)と言うものです。

当時の民家では、この土間床を利用して、夏は天然の冷蔵庫のように床下と併せて野菜をじかに土間床に置いて腐りを防いだり、冬には凍結を防いだりしてきました。しかも、冬には床下に外気が入りにくいように床下の通気を遮断
する装置を備え、夏には開放して涼しい地熱を涼風として建物内に取り込ん
できました。

〈現代の住宅への地中熱活用方法〉
それでは、昔の人が経験で上手に利用していた地中熱を現代の住宅に効率よく活用する方法を考えていきましょう。
下の図は、環境省のホームページからの抜粋です。

深さ10mくらいのところの地中の温度は、一年を通じて平均気温にほぼ等しくなっています。四国九州の南部で20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度です。一方、四季のある日本では、冬と夏に地上と地中との間で10℃から15℃もの温度差が生じています。つまり、温度が一定である地中は冬には温かく夏は冷たい。地中熱の活用ではこの温度差に着目して、効率的に熱エネルギーの利用を行っています。

次の図は、この地中熱の夏冬逆転現象を利用した千葉の玉川建設さんのモデルハウスを実際に温度測定した結果を図に表したものです。

建物が建っている状態では、建物直下の地表の温度が、地中10ⅿの温度と同様に真冬でも18℃であることがわかります。

〈中西工務店の取り組み〉
私達は1999年より北海道などで普及していた基礎外断熱工法を採用しました。基礎外断熱工法は、ベタ基礎を外側で断熱し温熱環境的には床下を屋内空間として作ります。一階リビングの空気を床下に循環させ、夏冬逆転する地中熱を利用し、夏は涼しく・冬暖かい一階の床をつくることができる様になりました。換気扇ひとつの電気代だけで地中熱を有効に活用できる熱伝導方式を採用しており、150棟以上の経験で試行錯誤を続け、現在ではイニシャルコスト、ランニングコストともミニマムで、お客様に提供できる様になりました。

〈国の取組〉
国の取組としては、1990年(平成9年)に行われた地球温暖化防止京都会議(COP3)で温室効果ガスの排出削減の数値目標を決定したことを機に、様々な取り組みが行われております。その中で環境省では、平成22年度から2年毎に全国の地中熱利用システムの設置状況を調査し、当社では1999年から標準採用した150棟以上の「基礎外断熱+地熱活用住宅」のデータを環境省に提出し、調査に協力しております。

〈環境省のコメント〉
地中熱は、天候や地域に左右されない安定した再生可能エネルギーとして、空調、給湯、融雪などの多様な用途に用いられ、省エネルギー、二酸化炭素排出抑制による地球温暖化対策、ヒートアイランド対策に寄与します。
環境省では、平成22年度から2年毎に全国の地中熱利用システムの設置状況を調査しています。今般、令和2年度に実施した調査の結果を取りまとめ、併せて「地中熱利用システム」パンフレットを改訂しました。
環境省は引き続き、地中熱利用の普及実態把握のため本調査を行うとともに、地中熱利用の更なる普及促進に取り組んでまいります。

環境省地中熱関係
https://www.env.go.jp/seisaku/list/thermal.html

◆コンクリートが長持ちするってどういうこと?

当社で基礎外断熱を採用した2つ目の目的は、基礎のコンクリートを長持ちさせることです。
住宅の基礎にはコンクリートが使われています。通常コンクリートの寿命は100年と言われますが、使われている状況により寿命はもっと短くなってしまいます。コンクリートの劣化の主な原因は「中性化」です。

皆さん化学の授業でpH(ペーハー・ピーエイチ=水素イオン指数)って習いましたよね?ご存じの様にpHとはある物質が溶けた溶液がどのくらい酸性・アルカリ性なのかを測る指標として用いられます。pHは0から14まであり、pH 0は強酸性、pH 14は強アルカリ性、pH 7は中性を示します。

基礎で使われるコンクリートは、施工直後には強アルカリ性です。そのpHは12~13程度ですが、その後お住まいになっていくうちに様々な理由で中性化していきます。pH10程度以下になると内部の鉄筋が腐食すると言われています。酸性雨もコンクリートの中性化を助けてしまいます。

中性化と並び塩害や凍害もコンクリートの劣化を早める原因となります。

地球規模での気象状況の悪化により建物への影響は以前に比べ大きくなっています。基礎コンクリートを外部から遮断することで、コンクリートを劣化要因から守ってくれます。

資料提供
環境省、城東テクノ㈱、㈱玉川建設

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